■METライブビューイング
ヴェルディ「ラ・トラヴィアータ」
[2012年5月17日(木) 新宿ピカデリー]
2011-2012シーズンのMETライブビューイング、
その最終上映は「ラ・トラヴィアータ」。
2年前NYで、かのゼッフィレッリによる
豪華で時代の空気忠実に描いた名演出版の
最後のステージに感銘をうけたが、
今回は、ヴィリー・デッカーによる
モダンなデザインの演出。
半円形一杯飾りのシンプルな装置、
大きな丸い時計が飾られ、
針が時を進めていく。
白い壁、
男も女も黒い衣装、
その中でヴィオレッタだけが深紅のワンピース。
配色もシンプルだが、
その分、ドラマと演出意図が伝わりやすい舞台だ。
その舞台装置の中に「常に」いるのは、
本来はチョイ役の医師グランヴィル。
ヴィオレッタの病状を常に診てきた彼の目線を通じて、
ドラマが展開していくという演出だ。
観ていて「なぁるほど」と感じたのは、
3幕への前奏曲のシーン。
その前の仮面舞踏会の大騒ぎに参集していた客たちが
ストップモーションになり、
グランヴィルが部屋の外へと押し戻していく。
この場面の光景が演出家の脳裏にまずアイディアとして浮かんで、
今回の演出コンセプトや細部が練り上げられていったのではないか、
と思わせるほど、オペラ全体の「核」ともいえる印象的な場面だった。
ラストのヴィオレッタの死も、
居合わせたアルフレードやジョルジョ・ジェルモンらが
「現在進行形」として彼女の死に接するのではなく、
それぞれの立場や想いで悲しみにくれている前で、
ヴィオレッタが息絶える。
核と芯がしっかりと定まったオペラ演出で、
納得のプロダクション!
主役のヴィオレッタは、
ナタリー・デセイ。
これが気の毒になるくらい絶不調。
劇中につく咳なんか、
演技なんだか本当のものなんだか・・・。
声に張りと艶はないし、高音もつらそう・・・。
しかし、ヴィオレッタという役、
結核を患い、死が刻々と迫っている女性なのだ。
プリマドンナには気の毒だが、
このくらい絶不調な方が、
かえって迫真の舞台表現になって感動的。
第3幕のヴィオレッタのアリアなど、
ヴィオレッタなんだかナタリー・デセイなんだかわからないくらい
切々とした歌唱で、涙腺を刺激されてしまった。

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