2012年2月12日日曜日

NYが生んだバロック・オペラ

今シーズンのMETライブビューイングのラインナップの中で、
一番期待していた作品を観に行った。

■METライブビューイング「エンチャンテッド・アイランド」
[2012年2月12日(日) 新宿ピカデリー]

ヘンデル、ヴィヴァルディ、ラモーをはじめ、
ルクレール、パーセル、カンプラ、
Jean-Fery RebelとかGiovanni Battista Ferrandiniなんていう聞いたこともないバロックの作曲家の曲で構成した「新作バロック・オペラ」。
いわゆる、寄せ集めの「パスティーシュ」だ。

おはなしの方は、シェイクスピアの「テンペスト」の世界に
「夏の夜の夢」の恋人たちを登場させたオリジナル台本。
「テンペスト」のプロスペローの島に、
新婚旅行航海中の「夏の夜~」の二組のカップルが難破して漂着。
妖精アリエルの魔法の掛け違いで、
プロスペローの娘ミランダと、魔女シコラクスの息子キャリバンを含めた6人の男女の組み合わせがごちゃごちゃになって大騒動を繰り広げる。

良く知られたシェイクスピアの登場人物たちが、
バロック音楽にのって繰り広げる「新作」の世界。
「なんちゃってバロック」にならないかと心配していたが、
これがどうして、活きのいいバロックオペラとなっていて、
いやぁ面白く拝見しました。

思えば、バロックオペラというものは、
王侯貴族が、その財力や権力の象徴として産み出した、
絢爛豪華な舞台芸術。
とすれば、現代ニューヨークのメトロポリタン・オペラこそ、
この地球上で絢爛豪華なバロック芸術を花開かせることのできる
唯一のオペラハウスなのかもしれない。

観終わって、「バロック芸術」について考えながら歩いていると、
ふとローマのボルゲーゼ美術館で見たベルニーニの彫刻「アポロとダフネ」が目に浮かんだ。
アポロに触れられた途端、月桂樹に姿を変えていくダフネ。
現実にはそんなこと起こるわけがないのに、
あたかも「そういうことがあった」と実感せざるを得ない芸術の力・・・。
嵐や海、怒りや愛、
なんでも描いてしまうバロック音楽に耳を傾けているうちに、
パスティッチョされた(寄せ集められた)バロック・オペラ
という架空の世界が醸し出す「芸術的説得力」に感心した。

出演者は、みなもう素晴らしく魅力的。
ネプチューンを演じたドミンゴなんか、その登場のシーンの演出の豪華さもあって、
ご立派の一言。Bravo!

「夏の夜~」のパックのような軽やかさで
妖精アリエルを歌い演じたダニエル・ドゥ・ニースがBrava!

「ドン・ジョヴァンニ」のレポレッロで好演したルカ・ピザローニはキャリバン。
おでこが黄色で顔が白塗り、見た目には誰だかわからないくらいの怪物メイクが可哀想だったが、もともと演技力がちゃんとしている人なんだな。単なる化け物ではなく、しっかりと「心」をもったキャリバンに仕上がっていました。Bravo!

そのほか、出演者全員Bravi!!!

それから、この構成を考え台本をつくったジェレミー・サムズもBravo!
こういう才能の人がいるんだねぇ。
指揮のウイリアム・クリスティーともども、
バロック世界に精通したアーティストが揃ったからこそ成し得た「新作」といえるかもしれない。

これは「観るべし!」です。

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