■新国立劇場「沈黙」
[2012年2月16日(木) 新国立劇場・中劇場]
遠藤周作の名作「沈黙」を松村禎三の台本・作曲でオペラ化した「沈黙」。
1980年にサントリー音楽財団から委嘱された後、13年もの歳月をかけて作曲されたという。
まさに渾身の一作!
キリシタンに対する弾圧が厳しい長崎の地に、自ら志願して赴任した若きポルトガル人宣教師。
彼を中心に、キリシタンたちの信仰、踏み絵、棄教・・・といった「重い」世界が描かれていく。
遠藤周作の原作同様、松村禎三の音楽も、この重い世界に真摯に向き合っている。
西洋の音楽芸術の中のオペラという表現形式をとってはいるものの、もはやこれは「オペラ」を超越した舞台芸術なのではないだろうか。
そう、客席にいて感じたのは、まさに宗教的な空間での「儀式」のような厳粛さのようなもの。
休憩時にシャンパンやワインを飲む観客の姿や、カーテンコールでの「ブラボー!」が、どこか場違いにさえ感じてしまった。
それほどまでに、舞台芸術の世界を通じて「何か」を考えさせられる見事なプロダクションだった。
演出は、新国立劇場演劇部門の芸術監督、宮田慶子。
斜めに傾いだ十字架が印象的な回り舞台(美術:池田ともゆき)をうまく使った丁寧な演出。
ただ、背景幕に投影される映像は、もう少しダイナミックな方がよかったかな。少なくとも、幕の余白がないくらいにはして欲しかった・・・。
キリシタンを弾圧し、宣教師に棄教をせまる長崎奉行・井上筑後守の衣裳は、橙色の折り紙のような裃姿。権力側の存在としての次元の違いを表したかったのかもしれないが、ちと滑稽すぎる。歌舞伎の赤侍ほど戯画化された役柄でもなく、むしろ当時の日本の為政者として、整然たる論理でキリスト教について発言する「いい役」なのだから、あそこまでデザイン化する必要があったのだろうか・・・?(衣装:半田悦子)
指揮は、新国立劇場初登場という下野竜也。
ピットでの指揮ぶりを見ていても、音楽の構造や流れが明確で、力強い「芯」のある音楽づくりをしていた。見事!
出演者は、宣教師ロドリゴを演じた小原啓楼が熱演!
ロドリゴの師で、棄教し日本に帰化したフェレイラを演じたのは、与那城敬。見た目もどこか西洋人ぽくて、納得の造形。
ロドリゴをマカオから案内してきたキチジローは桝貴志。棄教しながらも、ロドリゴへの親近感をすてきれない無学な小物ぶりが良く出ていた。
踏み絵を拒んで水磔にされるモキチを演じた鈴木准、その恋人オハルの石橋栄実、その他キリシタンの村人たちも、みな役をきちんと造形していて説得力がある。
これは日本人でしか描けないオペラなのかなぁ・・・?
たとえそうだとしても、日本の国立歌劇場である「新国立劇場」をはじめ、日本のオペラ界がきちんと守り続けていかなければならない作品であることは確かだ。

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