2011年10月26日水曜日

アンドレ・プレヴィンの魔術

とにかく、「見た目」と「音楽」のギャップが大きなマエストロだ。
アンドレ・プレヴィンのこと。
今回、ステージに登場した姿を見てびっくり。
なんと歩行器につかまりながらの登場。
しかし、いざ音楽が始まってみると、そのふくよかな響きや流れに瞬時に引き込まれてしまう。

■アンドレ・プレヴィン指揮、N響第1711回定期公演
[2011年10月26日(水) サントリーホール]

曲目は・・・
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
モーツァルト:交響曲第36番「リンツ」
R.シュトラウス:「ばらの騎士」組曲

特別なことは何もしていないように見えるのに、ホールが音楽の悦びで満ち溢れる。
モーツァルトとリヒャルト・シュトラウスでは、幸福感に満ちた音楽の時間が体験できた。

N響もふくよかな響きを出して好演していたが、フレーズの微妙な部分で、もう少し音楽を大切にアンサンブルを合わせてくれたらなぁ・・・と思う部分が何箇所かあったのが残念。

ショスタコーヴィチのソリストは、韓国出身のチェ・イェウンYe-Eun, Choi。
深紅のドレスで登場し、堂々たる音楽で、この大曲を面白く楽しませてくれた。Brava!

2011年10月25日火曜日

旅のグルメ【ウィーン】

旅のグルメ、締めくくりはウィーン。

美術館見学の前後に、ウィーン風のコーヒーを堪能。

手前はホイップクリームをのせた「アインシュペーナー」。向こうはカプチーノみたいな「メランジュ」。
(クンストハイス・ウィーンのカフェで)

いわゆるブラックコーヒー「ブラウナー」と、リンゴパイ「アプフェルシュトゥルーデル」。
(美術史博物館のカフェで)
 オペラの帰りには、オペラ座近くのレストランで軽食とビール。
ビール2杯とこれ(ソーセージとテリーヌ)で、チップ含めて20ユーロ。
当然、パンも出た。
東京で、居酒屋なんかで「軽く一杯」飲るより、考えようによっては、はるかに安い。

下は、グリンツィングのホイリゲで食べた、じゃがいもとマッシュルームのグリル(手前)。
ワイングラスの向こうは、ザワークラウト(いわゆるキャベツの酢漬け)。
自然発酵した酸味と、燻製のようなスモーク風味が独特で、大好物になりました。
もちろん、白ワインの「アテ」にぴったり!

そして、ウィーンの町なかにちょくちょく見かけるシーフードのチェーン店「ノルトゼーNordsee」で食べた白身魚のフライ。向こうは、海老と野菜のサラダ。
出来てる料理を見て注文できるので、至極便利。遅めのランチ時間だったが、近所のOLやビジネスマンなんかが一人でさくっと食事していて、結構賑わっていました。

2011年10月24日月曜日

旅のグルメ【チェスキー・クルムロフ】

世界遺産チェスキー・クルムロフは、ヴルダヴァ川が蛇行してできた地形を利用して、城と町ができている。


旧市街から城へ向かう橋には十字架のキリスト像が。
訪れた日はかなり寒く小雨模様だったが、ヴルダヴァではカヌーの練習なんかしていて、見ているこちらが震えあがってしまった。


ヴルダヴァ上流の勢いある流れを眺めていたら、この地では肉ではなく魚料理を味わいたくなった。
川マスのグリル。
付け合わせの野菜のグリルも素朴で彩豊か。
ボヘミア産のスパークリングワインや白ワインと良く合い、美味しくいただきました。

2011年10月23日日曜日

旅のグルメ【ムニェルニーク】

プラハ滞在中のとある一日。
エクスカーションで出かけたのが、プラハの北西にあるムニェルニークMelnik。

プラハ中央駅Praha hlavni nadraziから快速で40分ほどのヴジェタツィVsetatyで乗り換え、7~8分。
プラハから1時間ほどでいける小さな町です。

ここは、ボヘミア・ワインの町として知られ、川に面した高台にそびえるロブコヴィッツ家の城がワイナリー。
右側の蔦のからまる建物がロブコヴィッツ家の城でワイナリー。
教会の塔と城の間を進んだところにある展望台からは、ヴルダヴァ川とラーベ川、それにヴルダヴァ運河の3つの流れが合流し・・・
左から、ラーベ川、ヴルダヴァ川、そして運河。
ドイツに向かって流れを進めていく雄大な眺めが楽しめる。

そう、ここはスメタナの名曲、連作交響詩「わが祖国」の第2曲「ヴルダヴァ(モルダウ)」の最後の部分で、「ヴルタヴァは次第に視界から遠ざかり、やがてラーベ川へと注ぐ・・・」と描写されているポイントでもあるのです。


右上がドイツの方・・・
川に面した急斜面には、ブドウ畑が広がっています。
左下の中庭のある館がロブコヴィッツ家の城。
ワイナリーを見学し、代表的な「ルドミラ」という銘柄の赤ワインを飲んだあと、城の近くのレストランのテラス席で再びムニェルニーク・ワインを飲みながらランチ。
牛肉の塊を柔らかくボイルしたものに、マスタードのきいた濃厚なソースが。
そしてホイップクリームとイチゴジャムも・・・。
もちろん、付け合わせは定番クネドリーキ。

奥は、ウィーン風で、巨大なシュニッツェル2枚!

すっかりゴキゲンなワイナリー見学の小旅行でした。

2011年10月22日土曜日

旅のグルメ【プラハ】

旅の愉しみといえば、「食」。

今回のプラハ&ウィーン旅行では、高級レストラン訪問とかご当地グルメ食べ歩きとかはあえてしなかったが、それでも印象に残った「食」をご紹介。

まずは、プラハ編・・・

チェコ料理といえば、グラーシュとクネドリーキ。
前者は、平たく言えばビーフシチュー。
後者は、付け合わせのダンプリング。まぁ、チェコ風蒸しパンみたいなものですな。
上の写真は、プラハ到着の晩に、共和国広場Namesti Republikyに面したレストランのテラスで食べたもの。クネドリーキに香草が入っていて、グラーシュともども洗練されたお味だったのにビックリ!

そしてこれは、「ドン・ジョヴァンニ」を観たスタヴォフスケー劇場近くのセルフサービス・レストラン「ハヴェルスカー・コルナHavelska Koruna」のグラーシュとクネドリーキ。とにかく超安かっただけに、こっちの方が一般的な見た目とお味。

下は、カレル橋を渡って、小腹が空いたから軽く昼食でも・・・と入ったマラー・ストラナ広場のカフェのハンバーガー。
小腹どころか、これでお腹一杯!の巨大チェコ風ハンバーガー。
チェコ・ビールと良く合う素朴な味でした。

2011年10月21日金曜日

コペンハーゲン

プラハ&ウィーン旅行には、ちょっとしたオマケが・・・。

今回、スカンジナビア航空を利用したので、フライトはコペンハーゲン乗り継ぎ。ウィーンからコペンハーゲンまでは、スター・アライアンスでコードシェアしているオーストリア航空の早朝便。コペンハーゲンでは、約6時間の乗り継ぎ時間が・・・。

その乗り継ぎ時間を利用して、コペンハーゲン市内ミニ観光に繰り出した。

空港ロビーに直結したメトロの駅から約20分。
コンゲンス・ニュートーの駅で降り、広場に出たところで目にしたのが、この光景。
抜けるような北欧の青空のもと、首都のど真ん中の広場で、小学生たちが輪になって遊んでいる!
日本じゃ考えられない光景だ。

そして、すぐ近くの運河沿いのエリア「ニューハウン」へ。
建物の色と水の色、そして空とのコントラストが見事!

そして、「世界三大ガッカリ」とか何とか言われても、一度は見てみたい「人魚姫」。
天気も良く、世界各国からの観光客で賑わっていました。

アマリエンボー宮殿で衛兵の交替式なんかを見て、
ショッピング街「ストロイエ」でデンマークのデパ地下をひやかしたり、ロイヤル・コペンハーゲンやインテリア・ショップをのぞいたりし、
再びメトロで空港へ。
初めて降り立った北欧の町の風情を垣間見た、楽しく充実したオマケ観光でした。

2011年10月20日木曜日

バロック劇場の技術力

プラハからウィーンに向かう途中、南ボヘミアのチェスキー・クルムロフに1泊した。
ここは、ヴルダヴァ川が大きく蛇行したところに、13世紀に建てられた城がそびえる小さな町。
ユネスコの世界遺産に登録されていて、観光客もたくさん。

地元のビール醸造所や城を見学したり、川鱒料理とボヘミア・ワインを堪能したり・・・と、一通り観光をすませた翌日、再び城に出かけて劇場見学をすることにした。

このチェスキー・クルムロフ城には、バロック劇場が保存されていて、劇場だけの見学ツアーが設定されている。

城本体の見学ツアーに比べて、劇場だけのツアーは参加者もわずか。
我々のほかに、イタリア人カップルの4名だけ。

ここの特徴は、舞台機構がほぼ完全に保存されていること。
デモンストレーションを見せてくれるのかと思ったが、それはビデオでの鑑賞のみ。
客席やオケピット、舞台裏や奈落などを見学した後、ここで上演されたバロック・オペラの映像で、スペクタクルな舞台転換や切り穴を使った人物の登場など、様々な機構の操作やバロック時代の演出を鑑賞。

舞台の奈落では、滑車につながれたロープを操作して、一瞬ですべての袖パネルや背景幕を転換。町の広場から宮殿の大広間へ、城の庭園から戦場へと転換させていく。
この舞台転換の迅速さをもってすれば、あの繰り返しばかりで少々単調なバロック・オペラも大いに楽しめることだろう。

そして、驚きなのは、このスペクタクルでスピーディな大転換をたった二人の男(スタッフとか舞台係なんていうより、この場合「男」というのが相応しい・・・)でこなしていること!
最新式のコンピュータ制御の舞台機構なんか入れて、機械のメンテナンスに莫大な費用を要し、安全確認係も含めてスタッフも大勢配置しなければならない現代とは大違い。一瞬、舞台機構の技術力は、バロックから現代に時代が移るにつれて「退化」したのではないかと思ってしまったほど・・・。

この劇場空間と舞台機構を知らなければ、バロックの舞台芸術は理解できないだろうなぁ。
いつの日か、ここでバロック・オペラが上演される機会があったら、是非、再訪したいと強く思った。

2011年10月19日水曜日

スクロバチェフスキ御大の名演

いやぁ、長~い演奏会だった。
「長~い」っていうのは、本番時間のことじゃなく、
指揮者とオケの名前・・・。
(ついでにホール名も長い)

■スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮
ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・
ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団
[2011年10月19日(水) 東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアル]

御歳88歳!!!のスクロヴァチェフスキ御大が、
首席客演指揮者をつとめるドイツのオケを率いて来日。

曲目は、
モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

“爺さん好き”としては、足を運ばないわけにはいかない。

スクロヴァチェフスキの指揮には、これまでも読響やN響で何度も接している。
そして、老いてなお、というか老いて益々・・・いやいや、「老い」などとは全く無縁に、毎回、「骨太」で「矍鑠」とした音楽を聴かせてくれることに感服している。

今回も、いたるところにバランスの細工や微妙なニュアンスなど、様々な「味付け」を施しながら、それらがちっとも「作為的」にならず、曲全体が心地よい緊張感をもって弛緩することなく滔々と流れていく、演奏芸術の醍醐味に感動。

特に、弦の中音域や低音域をおろそかにせず、しっかりと響きの厚みと強度を作っていたのが印象的。そして時おり、こんな美しいフレーズが隠されていたのか、とハッとさせられるような瞬間があり、何度も聴いているはずの曲でも新鮮な体験ができる悦びがあった。

本当に感動的な演奏会というのは、曲が終わりに差しかかるにつれて、「あぁこのまま、いつまでも終わらないでほしい・・・」と思うもの。
まさに、演奏が終わってしまうのが惜しいような演奏だった。

拍手やブラボー!のフライングもなく、最後の和音の余韻がホール空間に消えていってから、爆発的な拍手とブラボー!(ホッとした)
オケの団員が引き揚げてからも、2度の指揮者ソロ・アンコール。1回目はホルン奏者、2回目はコンマスを伴って舞台に登場。うれしそうに拍手に応えるマエストロも、満足そうだった。

2011年10月18日火曜日

オルガンは教会に限る!

「さんまは目黒に限る」じゃないが、
やっぱり、オルガンは教会で聴くに限る。

ヨーロッパを旅していると、古くからある教会で行われるオルガン・コンサートに出くわすことがよくあり、そういう機会には、出来るだけ足を運ぶようにしている。
なぜなら、コンサートホールにどんなに「立派な」パイプオルガンを設置しても、「ヨーロッパの古い教会」だけは日本に持って来られないのだから・・・。

今回の旅行でも、プラハの街でオルガンのコンサートがあることを知った。

場所は、旧市街からカレル橋を渡った、プラハ城の「麓」みたいな地区「マラー・ストラナ」にある、聖ミクラーシュ教会。
中に足を踏み入れた瞬間、その装飾の美しさに目を奪われる。
 そしてここのパイプオルガンは、モーツァルトが1787年に演奏したことでも知られていて、今でもちょっと遠目にその楽器を見ることができる。

コンサートで使用したオルガンは、祭壇に向かって左側のバルコニーに設置された別のオルガンだったが、モーツァルトが目にした教会内部の「景色」を同じように見ながら聴くオルガンの響きは格別だった。

プログラムは、オルガンとトランペットの組み合わせで、二重奏とオルガン・ソロが交互に組み合わされた構成。
シャルパンティエにはじまり、ブリクシBrixiやヴァンハルVanhalといったチェコの作曲家、J.S.バッハやヘンデル、ブクステフーデなど盛りだくさん。
もちろん、モーツァルトの作品も2曲(Kv.153とKv.154のフーガ)、演奏された。

オルガンはJosef Ksica、トランペットはJosef Zamecnik。

観光客を対象とした1時間程度のコンサートだが、オルガンの柔らかな響きとトランペットの直線的な響きが教会の中で心地良く融和し、心癒されるひとときだった。

ヨーロッパを旅する機会があったら、教会でのオルガンコンサートは要チェックですよ。

2011年10月17日月曜日

楽友協会に響くモーツァルトとマーラー

ウィーン最後の晩は、ムジークフェラインの大ホールに出かけることにした。

■ローター・ツァグロセク指揮、ウィーン交響楽団
[2011年10月12日(水)19時30分開演 ムジークフェラインザール・大ホール]

指揮は、ジェイムズ・レヴァインの代役でNYに飛んで行ってしまった首席指揮者のファビオ・ルイージに代わり、ローター・ツァグロセク。
曲目は、
モーツァルト:ピアノ協奏曲 Kv.467
マーラー:交響曲第7番

まず!
モーツァルトでソリストをつとめたセルビア生まれの女性ピアニスト、
ヤスミンカ・スタンクルJasminka Stanculが素晴らしかった!
演奏会用ドレスではなく、黒のジャケットに黒のスラックス、赤いシンプルなブラウスという衣裳で登場。颯爽とした外見同様、音楽も弛緩したところがなく、軽快そのもの。
Fazioliのピアノを使用し、コロコロとしたピアノの音が宝石のようにホール空間のあちらこちらに乱反射して愉しげに踊る。
良く響くオーケストラの適度な音の厚みの上で、ピアノの音が何と素敵に聴こえたことか!
完全手造りのFazioliのピアノも、初めて聴く機会だったが、モーツァルトの疾走するパッセージに抜群の効果を発揮していた。

ピアニストも、この疾走感をもっと楽しみたかったからなのか、ソロ・アンコールにはさらに速いパッセージで弾きまくる現代的な小品をプレゼントしてくれた。
後で、ムジークフェラインのホームページで確認したら、Boris Papandopuloというクロアチア人作曲家(1906-1991)のエチュード第1番。

ムジークフェラインの舞台は狭いので、休憩中の転換も大変。ピアノだって、足はずして立てて移動です。

休憩後は、マーラーの大曲、第7番の交響曲。
印象に残ったのは、第2楽章。
夜営に向かう兵士たちのボヘミア風マーチに、牧場の牛たちが驚いてカウベルをカランコロンと響かせる・・・今回、プラハからウィーンへと旅してきて、マーラーが故郷で耳にしたであろう音楽風景を、マーラーも舞台に立ったことのあるここウィーンで聴くことができ、このとっつきにくい曲に初めて親しみを覚えた。

ツァグロセクの指揮は、派手さはないものの、職人的なプロの仕事ぶり。
ムジークフェラインの豊かな響きを楽しみながら、マーラーの長大な交響曲をまとめ上げ、大喝采を浴びていた。
ウィーン交響楽団も好演!

それにしても、ホールを出て、リングを渡る信号待ちをしていたら、後ろに立った老婦人お二人のこんな会話が・・・。
「長かったわね」
「そうね。マーラーなんて聴いたことある?」
「いいえ」
「わたしは、2回目かしら」

一瞬、マーラーと同時代の人かと錯覚してしまったが、そんなことはない。
マーラーは今年没後100年だもの・・・。
でも、一瞬でもそう思わせてしまうほどの、ウィーンの街の雰囲気でした。

2011年10月16日日曜日

ウィーンでオペレッタと歌芝居

ウィーンでは、次の2本。

■ヨハン・シュトラウス「ウィーン気質」
[2011年10月10日(月)19時開演 ウィーン・フォルクスオパー]

オペレッタというものに普段あまり接する機会がなかったが、せっかくウィーンに来たのだから、ウィーンらしい演目を観ようということで、当日になってフォルクスオパーの「ウィーン気質」の切符を取る。

夕暮れに浮かぶフォルクスオパー。赤のラインが印象的。
 今年9月にプレミエ上演されたばかりの、Thomas Enzinger演出による新プロダクション。

マイム役者演じる金ぴかのヨハン・シュトラウス像が舞踏会場の入り口で客からチップをもらったり、クリムトやフロイト、はてはフランツ・ヨーゼフ皇帝やエリザベート妃を思わせる人物などが登場したり、とまさにウィーン気分満点。
舞台美術も大胆で、フォルクスオパーの小迫りや回り舞台を効果的に使用しスピーディ。
歌手たちも芸達者で、理屈抜きで楽しめる。
「トリッチ・トラッチ・ポルカ」でのバレエ・シーンも見事!
そして、Wiener Blut(ウィーン気質)の二重唱が歌われたときには、思わず胸が熱くなった。

ウィーンでこそ味わえる、オペレッタの愉しい時間だった。


■モーツァルト「魔笛」
[2011年10月11日(火)19時開演 ウィーン国立歌劇場]

そして、Staatsoperの「魔笛」。
これも、モーツァルトとこの街に所縁の演目。
Marco Arturo Marelliの演出・舞台美術・照明による、2000年プレミア上演のプロダクション。
今回の指揮はアダム・フィッシャー。

「魔笛」用の緞帳になって、開演を待つ・・・
 ちょっと傾斜した大きなキューブBOXの舞台デザインに、幕や照明に大胆な色を使い、その中でおなじみの「魔笛」の世界が展開していく。

この街で市民社会が力を得ていった時代に、モーツァルトとシカネーダーの共同作業で、
自由や幸福を謳いあげた、この「歌芝居」が創られたのだと思うと、感慨もひとしお。

「魔笛」というオペラ(というか歌芝居)は、ストーリー展開や人物の造形を厳密に考えると、おかしなところもたくさんある作品だが、ウィーンの街でモーツァルトの住居や葬儀が行われたという場所などを見物した後だと、死を直前にしてもなお、こんなに素敵な音楽を生み出したモーツァルトの才能に思いをめぐらせないわけにはいかない。

出演者は、パパゲーノのHans Peter kammerer、夜の女王のJulia Novikova、モノスタトスのBenedikt Kobelらに、もう少し声量があったらと感じた。

それにしても、さすがはウィーンの国立歌劇場。
アン・デア・ウィーン劇場でのプレミエから10年以上が経過し、引っ越し公演も含めて1000回以上も上演されているプロダクションにもかかわらず、しっかりとした水準に満足した次第。

2011年10月15日土曜日

プラハのオペラ3題

さてさて、プラハでは、代表的な劇場3つでオペラを鑑賞した。

■ヴェルディ「ラ・トラヴィアータ」
[2011年10月4日(火)19時開演 国民劇場Narodni divadlo]

ドイツ人支配に対抗して、チェコ民族がチェコ人のために作った国民劇場。
ヴルダヴァの河畔に黄金の屋根をいただいて堂々とそびえる劇場だ。

日本から予約はしていなかったが、プラハ訪問の記念に、その劇場を訪問してみることに。
演目は、イタリア物だったが・・・。

劇場の中は装飾も華やかで、豪華そのもの。
プロセミアム上部のNAROD SOBE!
のスローガンに、チェコ国民の気概が感じられる。
案内係の女性に意味を尋ねたところ、
「チェコ民族がプレゼントし、自分たちにもプレゼントし・・・」
とかいう意味だとか。
「チェコ民族による、チェコ民族のための」
といったところなのだろうか。

額縁上部にNAROD SOBE!の文字が・・・

ところが、客の入りがあまり良くない。
高齢のプラハ市民と観光客で6~7割程度といったところ・・・。

オケの音もヴェルディの壮麗さと甘美さには程遠い。
(指揮は、日本でもおなじみのマエストロ、オンドレイ・レナルト)

半円形の装置を組み替えて見せる舞台も、
見た目に変化が乏しく貧弱に見えてしまう。

では、歌や演技が素晴らしいかというと、
舞台上のアンサンブルの緊張感やテンポ感も今ひとつ。
子役なんか、きっかけがきっかけが早過ぎて、出トチってた。

演出は、Jana Kalisova。1998年2月プレミエの版。


■モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」
[2011年10月5日(水)19時開演 スタヴォフスケー劇場Stavocske divadlo]

2本目は、「ドン・ジョヴァンニ」。
初演された所縁の劇場での上演。
実は、旅行の日程を立てているとき、この劇場で「ドン・ジョヴァンニ」の上演があることを知り、
前後の日程を組みかえたほど。

制作は、国民劇場で、オケも合唱もバレエも同じ。
だが、モーツァルト所縁の劇場での上演ということで、
こちらの方がはるかに活き活きとした上演だった。

まず、Josef Svobodaによる舞台美術が素晴らしい。
客席側の内装デザインがそのまま舞台にも連続している。
客は、まるで舞台が繰り広げられる場所に自分たちもいるような感覚で、
オペラの劇世界に没入できる。

ツェルリーナを演じたのは、Yukiko Srejmova Kinjoさんという日本人。
日本人らしく丁寧な歌唱が印象的。
ドン・ジョヴァンニのMartin BartaとレオポレッロのPeter Mikulasのコンビも楽しめた。

騎士長は、「ラ・トラヴィアータ」の医師グランヴィル役、
そして、ドンナ・アンナはヴィオレッタ役。
こうした連日の出演は日本では考えられないこと。
レパートリー上演の「一座」感が出ていた。

指揮は、Jan Chalupecky。
Vaclav Kaslik演出の2006年5月プレミエ版。

Don Giovanni終演後のスタヴォフスケー劇場

モーツァルトが、この街で愛され、幸せな時を過ごしたことを想像しながらの舞台体験でした。


■ドヴォジャーク「ルサルカ」
[2011年10月7日(金)19時開演 プラハ国立歌劇場Statni Opera Praha]

そして、プラハでの3本目、三つめの劇場は、
かつてのドイツ劇場、プラハ国立歌劇場でのチェコ物「ルサルカ」。

雨が降っていて寒かったので、道路の反対側に渡って正面から写真を撮るのはあきらめた。

チェコ語のオペラは、その言語のせいもあるだろうが、なかなか上演に接する機会がなく、
本場のチェコでチェコ人による上演に接してみたかったのだ。

さすがに合唱など、解らないなりにもチェコ語の響きが素晴らしく、聴きにきて良かったと思った。

演出は、Jiri Strunc。
序曲が始まると、紗幕に水面や森の中の湖、森の精や白馬に乗った王子の一行などが映し出されて、ドラマへとつながっていく。そう、「連鎖劇」そのものの手法。

演出的な特徴は、この映像を効果的に活用した連鎖劇的手法。
このおかげで、「ルサルカ」のお伽噺的な世界が、ある程度説得力のある舞台として、ダイナミックに舞台化されていた。

ルサルカを演じたHelena Kaupovaは、声量があまり豊かではなかったのが残念。
特に低音部など、完全にオケに消されてしまっていた。
水の精ヴォドニク役のRoman Vocelは、堂々とした体格と声量、緑色に塗った顔や衣裳で、異次元の存在として異彩を放っていた。

それにしても、こちらも客の入りは悪かったのは残念。
いくら、かつてのドイツ劇場とはいえ、チェコの国立の歌劇場が、お国物のドヴォジャークのオペラでこの不入りは情けない。

2011年10月14日金曜日

まずは写真で・・・

プラハ&ウィーンの旅から戻った。
約10日間の滞在中、足を運んだ劇場・ホールは次の通り。

















パソコンは持参したけれど、ブログのアップなんかする暇もないくらい街歩きを楽しんでいたので、観たオペラ、聴いたコンサートの感想は、いずれ追々・・・。

まずは場内写真だけでお楽しみください。

開場中や休憩中に写真を撮っていても、どこかの国みたいに「レセプショニスト」がすっ飛んで来ることもなく、大変おおらかで楽しい舞台芸術体験でした。

2011年10月3日月曜日

渡欧を前に

さて本日から、2年ぶりのヨーロッパです。
今回の訪問先は、プラハとウィーン。
これまで、どちらかというとイタリアとかスペインとか「地中海世界」に行くことが多かったので、海のない中欧は本当に久しぶり。

オペラも3本観る予定。

それにしても、最近、欧米でオペラやコンサートに行くときに思うのだが、
あちらのチケット予約が便利だねぇ。
インターネットで席まで指定できて、チケットは自宅のプリンターでバーコード入りチケットをプリントアウト。(プラハは、到着までに宿泊ホテルにデリバリーしてくれる。)
海外から旅行者が頻繁に訪れ、舞台芸術を楽しむ環境が当たり前の社会ならではのサービスだ。

それに引き替え、我が日本は・・・。
試しにいくつかの劇場や演奏団体で試してみたが、ほとんどが・・・駄目だこりゃ。
上演する側が、「外人さんは、どうせ日本に来てまでオペラやクラシック・コンサートなんか行かないでしょ」と言っているようなもん。
いつまでも「コンビニ引き取り」とか「代金お支払い確認後、郵送」なんてことやってたんじゃ、この小さな島国に暮らす人の中で、舞台芸術に興味を抱く僅かな人にしか切符は売れないよなぁ・・・。
これじゃあ日本の舞台芸術を取り巻く環境は成熟・発展しないよ。

「助成金」を芸術団体にチマチマばら撒くなんてことはやめて、欧米や中国・韓国からでもチケットが取りやすい予約&発券システムの「インフラ整備」に国家予算さいて、「ようこそニッポン!」キャンペーンでもやりゃあいいのに。
そうすりゃ、芸術性の高い創造的な芸術団体は客が増えて、企業協賛なんかもボンボンついて、「社会的に必要な存在」としてのステイタスが抜群に向上すると思うよ。

・・・・てなことはさておき、そろそろ出かけるとするか。

2011年10月2日日曜日

クストリッツァ監督「アンダーグラウンド」

久しぶりにいい映画を観た。
エミール・クストリッツァ監督の1995年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作、「アンダーグラウンド」。

3度の「戦争」でズタズタになった挙句、「国」そのものが失われてしまったユーゴスラヴィア。
「首都」ベオグラードの動物園や劇場を舞台に、詐欺師まがいの自称劇作家、電気技師、美貌の舞台女優をはじめ、猥雑で活力のある登場人物たちが「国難」の中、したたかに生きていく。

この映画で「地下に潜った」人たちは、地下に武器工場を作り、鉄砲から戦車を作りながら社会を作って生活している。
最初はナチの侵略に抵抗してのことだったが、「東西冷戦下」ではチトー体制を文字通り地下から支え、やがて「内戦」が終わってみると祖国そのものが消滅していた・・・。この一見「大河ドラマ」的で壮大な歴史の流れを狂気を交えたファンタジーで力強く映像化していく。
これぞまさしく「映像による叙事詩」。監督が描きたかった「祖国」「民族」「人間」「戦争」に対する想いが凝縮され、「濃い映画」になっている。

「濃い」といえば、東欧のジプシー・ブラスバンドの強烈な音楽が全編にわたって付き纏うのも快感。

ドナウ河の岸辺でパーティをするラストシーン・・・これはもう感動的ですよ。

観終わってみれば、随所に暗喩や警告がアイロニーたっぷりに散りばめられている。
それらを一つ一つ思い起こしながら考えるのも一興。
これぞ優れた芸術作品に触れたときの悦びというものだ。
カンヌで大賞を獲得したのも頷ける。

とにかく、歴史を奇抜なアイディアで脚色しながら、観る人の心を強烈なメッセージで射抜く手腕はさすが。映像作家クストリッツァ監督にBravo!

10月21日までの限定上映だからお見逃しなく。