2011年9月24日土曜日

室内楽で励まされる日本

6月のライプツィヒ弦楽四重奏団によるチャリティコンサートに続いて、
http://dellarte-yoshida.blogspot.com/2011/06/blog-post_27.html
東京ドイツ文化センターがまたまた震災被害者のためにチャリティ公演を催してくれた。
現在「引っ越し公演中」であるバイエルン国立歌劇場のオーケストラメンバーの自主的な申し出によるものだとか。なにせ、400人規模の来日メンバーのうち、4分の1の100人が日本行きを拒否した、とかで話題になっていただけに、チャリティ演奏会で日本を応援しようという気持ちをもっているメンバーもいることを知って、日本人としては大いに励みになったのではないだろうか。

■バイエルン国立管弦楽団団員による
チャリティ室内楽コンサート
[2011年9月24日(土) ドイツ文化会館ホール]

シューベルト:弦楽三重奏曲第1番 変ロ長調 D.471
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 Kv.581
シューマン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.47

編成と作曲家のタイプが異なる3曲によるプログラムで、変化があり、素直に楽しめた。
気心知れたオーケストラ仲間によるアンサンブルの愉しみ、といったところ。
丁々発止を繰り広げる音楽ではなく、音楽することの悦びに満ちた室内楽本来の姿・・・。

震災から半年が経過して、落ち込んでばかりもいられない時期。
でも、音楽の力で「再生」と「復興」に向けて気持ちを新たにし、着実に歩んでいかなければならない。そんな日本人の肩に優しい手で添えてくれるような演奏会だった。

2011年9月21日水曜日

嵐の中、感動を求めて・・・

苦労の後には喜びが・・・。
台風直撃の中、なんとかホールに辿り着いた聴衆に贈られたのは、素晴らしい音楽体験だった!

外は暴風雨。公共交通機関もズタズタ。
途中の「足」がどうなるかわからないし、そもそも傘なんか役に立たないほどの雨と風。
なるべく濡れないようにルートを選び、それでもずぶ濡れになりながら辿り着いサントリーホール・・・開演前に客席を見てビックリ!
客がほとんどいない!
故・岩城宏之マエストロが現代音楽をギンギンやっていた大昔の3月定期でも、こんな「不入り」はなかったなぁ。
ざっと数えると、400人から500人・・・2割から2割5分といった寂しい光景。

でも今日の客は、この嵐の中、ブロムシュテット&N響の音楽に期待を込めて馳せ参じた「熱い聴衆」だった。

■ヘルベルト・ブロムシュテット指揮、N響第1708回定期
[2011年9月21日(水) サントリーホール]

シューベルト:交響曲第7番「未完成」
ブルックナー:交響曲第7番

・・・という、重厚名曲プロ。
10日前の「新世界交響曲」にいたく感銘してたから、期待も大。

各セクションが絶妙の調和で融合する有機的な響き。
そのブレンドの中から醸し出される、滋味あふれる音楽。
シューベルトもブルックナーも、聴き慣れた名曲だが、いつまでもその音楽に浸っていたいと心から願いたくなるような、新鮮で温かみのある音楽。
究極の再現芸術であるオーケストラ演奏の真髄みたいなものが、今日の演奏会からは感じられた。本来、演奏会というものは、このくらい密度が高くなければ!
(でも、その密度を体験できるのは、悲しいかな何年かに一度といった割合なのも現実)

そうそう、「密度」といえば、今日の客席は少ないとはいえ、この悪天候の中、「聴きたい!」と集まった積極的な客。不用意な雑音もなく、舞台と客席の「気持ち」が通じ合って化学反応を起こし、とてもいい空気を作り上げていたのも印象的。

素晴らしい演奏会に、客席が感動しないはずはない。
N響の定期公演には珍しく、楽員が引き揚げた後に、マエストロのソロ・カーテンコール!
いつまでも記憶に残る「感動的な演奏会」が、久しぶりにまたひとつ増えた。

2011年9月19日月曜日

ザンデルリンクが亡くなった

今朝、インターネットや新聞に指揮者クルト・ザンデルリンクの訃報が乗っていた。
ベルリンで死去。98歳だったそうな。
http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201109180397.html

ザンデルリンクの指揮は、かつて2回接している。
読売日本交響楽団を指揮した次の演奏会。

1978年9月22日 日比谷公会堂
読売日響 第145回定期
ベートーヴェン:交響曲第1番
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番

1978年10月17日 日比谷公会堂
読売日響 第146回定期
ストラヴィンスキー:三楽章の交響曲
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
  (ピアノ独奏はアルド・チッコリーニ)
シューマン:交響曲第4番

会場が日比谷公会堂だったせいもあるだろうが、硬質で堅牢な演奏だった印象が残っている。
それは、彼がドイツからソ連に移住し、レニングラード・フィルの常任になったこととも関係するかもしれない。西欧やアメリカの音楽ビジネスとは無縁の社会主義的環境で、ひたすら音楽にのみ向き合っている質実な巨匠・・・といったイメージだ。

その後、何度かとも来日したようだが、実演を聴いたのはこの2回のみ。
シュターツカパレ・ドレスデンとの来日演奏会を録音したチャイコフスキーの交響曲第4番のCDを聴きながら、静かに追悼するとしよう。

そうそう、父の遺品には、レニングラード・フィル初来日公演(1958年!)のプログラムがあって、アレクサンドル・ガウク、アルヴィド・ヤンソンスとともに、クルト・ザンデルリンクの名前が載っている。
ちなみにソリストはロストロポーヴィッチ。

ザンデルリンク指揮によるプログラムは2種類。
ひとつは、
チャイコフスキー:幻想序曲「ハムレット」
プロコフィエフ:チェロ協奏曲(「ロストロポーヴィッチに捧ぐ」とあるからおそらく第2番の方)
ブラームス:交響曲第4番

もうひとつは、
ラフマニノフ:交響曲第3番
チャイコフスキー:交響曲第5番

という、なかなか骨のあるプログラム。
演奏会場は、「新宿コマ劇場」だって・・・。時代だねぇ・・・。

また一人、真のマエストロがいなくなってしまった。
合掌。

2011年9月11日日曜日

Bravissimo!ブロムシュテットの「新世界」

■ブロムシュテット指揮、N響定期
[2011年9月11日(日) NHKホール]

NHKホールではオーケストラと一体となれないもどかしさをいつも感じていたが、今日は音楽がなんとも絶妙なバランスで心地よく響き、心躍る感動的な体験ができた。

それもこれも、ヘルベルト・ブロムシュテットの指揮のおかげ。
このマエストロ、N響を振り始めたころは、正直言ってあまり好きなタイプじゃなかったが、ここ2~3年の来演で、こりゃやはり只者ではないぞ、と(遅ればせながら)感心&注目しはじめた次第。

今回は、「新世界」(Aプロ)、「チャイ5」(Cプロ)、「未完成」(Bプロ)・・・と、名曲中の名曲を並べた9月定期シリーズだが、今日の「新世界交響曲」なんか、これほど各セクションがバランス良く有機的に響き、音楽そのものに素直に感じ入ることができる、まさに「名演!」だった。
手あかのつくほどやりつくされたような名曲をここまで料理し、しかも作為的なものを何も感じさせず、音楽そのものに内在する芸術的説得力だけで勝負する・・・こうした演奏芸術を実現できるのは、真の巨匠の証!

マエストロ・ブロムシュテットは、今年御歳84歳。
でもちっともよぼよぼしていない。むしろ元気ハツラツ。
テンポだって緩まないし、音楽の造りが堅牢そのもの。
この先まだまだ何回も来日してもらって、「実のある」音楽を聴かせてほしいものである。

プログラム前半は、竹澤恭子をソリストに迎えて、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。
オケの確固とした音楽の上に、ソリストのパッションがしっかりと乗って、見事な演奏!
(当初のソリストは、レオニダス・カヴァコス。病気でキャンセルだとか・・・)

それにしても、演奏がいいと、客席の雰囲気も良くなるもんだ。
今日は、不注意な雑音(クシャミの暴発とか、飴の袋を破るカシャカシャ音とか、居眠りしててプログラムやチラシをバサッと落とす音・・・)がほとんどなく、舞台と客席が「音楽」を共有し体感している心地よい空気が感じられた。

すべての点で、Bravissimo!な演奏会でした。

2011年9月9日金曜日

こりゃあ確かにビッグバンだ!

「記譜法」(いわゆる楽譜)、「オペラ」、「平均律」(いわゆる調律)、「ピアノ」、そして「録音技術」・・・。

そのどれもが、人類がもともと当たり前に持っていたものではない。偶然にせよ、歴史の必然にせよ、いつかどこかで誰かが「発明」した産物なのだ。

鑑賞するだけにせよ、演奏する側にせよ、現代の我々が音楽生活を営む上で、これらがなかったらどんなことになっていただろう。
「自分はオペラなんか見ない!」という人もいるかもしれないが、音楽で人間の情感を表すのに「オペラ」という芸術形式は画期的だったし、その後のあらゆる音楽や音楽劇に多大な影響を及ぼしたのだ。

ましてや、「楽譜」がなかったら、オーケストラだって演奏できないし、現代の演奏家がモーツァルトやショパンの曲でリサイタルをすることもできない。
「ピアノ」なんか、ピアノ教室にリサイタル、合唱の伴奏やオペラの稽古、ラジオ体操なんかにも大活躍である。
「録音技術」がなかったら、音楽を聴く機会が著しく減ってしまうだろう。(現代人はちょっと音楽を聴き過ぎな感も否めないが・・・)
「平均律」だって、演奏家がバラバラな調律による楽器や音階で演奏してたら、(少なくとも西洋音楽になじんだ耳には)かなり耳障りな音楽に聴こえるはず。

この本は、これら我々にとって当たり前な音楽の「事物」を、かなり専門的な事柄にも突っ込みながら解りやすく(「平均律」の章はチト難しかったが・・・)説明してくれている。

原題は「Big Bangs~The Story of Five Discoveries that Changed Musical History」。
読んでみると、これら五つの事物の出現が、音楽史上まさに「ビッグ・バン」だったことが解る。

「音楽史を変えた五つの発明」
ハワード・グッドール著(松村哲哉:訳)
2011年 白水社刊

2011年9月3日土曜日

マーラーで秋のシーズン開幕

■インキネン&日本フィル「マーラー:交響曲第3番」
[2011年9月3日(土) サントリーホール]

まだまだ蒸し暑いし、台風も接近している中、
9月に入って無理やり「芸術の秋」が開幕したといった感じ。

今年の個人的シーズン始めは、
ピエタり・インキネンが指揮する日本フィルでマーラーの「3番」。
「夏の朝の夢 Sommermorgentraum」なんていうタイトルがついていたこともあるくらいだから、夏の時期にはいいのかも。でも、マーラーが夏の別荘で体感した夏の自然とは、日本の夏はずいぶんと違うだろうなぁ。なんせ、この湿度・・・。

演奏の方は、一言でいうと端正なマーラー。
やっぱり日本のオケの特性なんだろうな。
妙に脂っこさがなくて、「きちんとした」演奏。
でも、それだからこそ、曲の壮大さが自然と作用して、
立派なマーラー演奏でした。

メゾ・ソプラノのアンネリー・ペーボの歌唱が見事。
舞台姿に華があって、この長大な曲の良きアクセントになっていた。