2011年6月21日火曜日

人と社会の「業」を描いた井上ひさしの名作

■井上ひさし「雨」
[2011年6月21日(火) 新国立劇場・中劇場]

「人殺し」にも様々なタイプがある。

小悪党が企てを成し遂げるために、目の前の障害を取り払おうと咄嗟に起こしてしまう「殺し」。
社会では充分「犯罪」として罰せられることにはちがいないが、芝居の世界では、当の小悪党ぶりも相俟って「面白い」見世物になる。

もうひとつの「人殺し」は、
組織や社会が、自らの運命共同体を守らんがために集団で起こすもの。
共同体の面々が「嘘」をつき、口裏を合わせ、一人の人間を「死」に追いやる。
そこには、集団ヒステリーのような不気味さがあり、
こちらのほうが「犯罪」として深く重く、
観る者への強烈なメッセージとなる。

新国立劇場で上演されている井上ひさし作の「雨」(栗山民也演出)は、
そんな二つのタイプの「人殺し」を観客に突きつけながら、
人の営みのはかなさ、悲しさを描いた力強い舞台だ。
人と社会の「業」みたいなものが、じわじわと観る者の心に迫ってきた。

山形の紅花問屋の当主になりすます江戸の金物拾いの徳を小気味よい小悪党ぶりで演じた市川亀治郎がBravo!歌舞伎役者だし、和物の身のこなしが板についていて、舞台上の芯になっていて安心して観ていられる。口跡も良く、江戸ことばと方言の「言葉」の効果も面白い。
紅花問屋の器量よしの女房を演じた永作博美もいい。器量と気品、そして終幕の不気味さと悲しさが体全体から発散されていた。

他の出演者もみな好演。
植本潤君が花組芝居の舞台で見せるときの「おきゃん」な感じを出しながらも、大店の番頭を「きちんと」造形していたのにも感心。

井上作品には少々広すぎる劇場空間かなと心配したが、回り舞台をテンポ良く使い、乞食や農民などの「群衆」も充分な数でダイナミックに動かしていた。
幕切れで舞台奥に一面の紅花畑が広がるシーンなどは、感動ものでしたよ。

6月29日(水)まで公演。見るべし!

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