2011年6月14日火曜日

巨大舞台機構と人間ドラマの勝利!

■METライブビューイング「ワルキューレ」
[2011年6月14日(火) 新宿ピカデリー]

2010-2011シーズンのMETライブビューイング最後の演目は、
ワーグナーの「ワルキューレ」。
ロベール・ルパージュ演出による『指輪』チクルスの第2弾だ。

現代のオペラ業界で、こんなにもスペクタクルな舞台が実現できるのは、
世界中探してもMETだけだろう。
「マシン」と呼ばれる巨大な装置が、家や森や岩山に変化する。
なんと!三幕冒頭の有名な「ワルキューレの騎行」では8頭の馬にまでなって、
客席(METの・・・)から期せずして称賛のジワがあがっていた。
このシーンだけでも一見の価値あり!Bravo!

歌手のド迫力もBravi!
フリッカを歌ったステファニー・ブライズは存在感が圧巻。
そんなフリッカの前でのブリン・ターフェル演じるヴォータンのオロオロぶりが微笑ましい。
そして、デボラ・ヴォイトのブリュンヒルデが、行動的な娘の雰囲気を醸し出していてBrava!
ヨナス・カウフマンのジークムントとエヴァ=マリア・ヴェストブルックのジークリンデは、
見た目にも双子の兄妹と納得できる姿形で説得力あり。
8人のワルキューレ(女戦士)たちも、容姿ともども粒がそろっていて、馬で戦場を駆け巡る活発な姫君であることがよくわかる。

今回の新演出は、ルパージュ演出のスペクタクルな機構がMETの組織全体にも浸透して、
躍動感のある、長さがちっとも苦にならない舞台仕上がりになっていた。

それにしても、この「ワルキューレ」という作品、
双子の兄妹による近親相姦やら、
夫がどこにいてもその行動をお見通しのこわーい妻やら、
神々の長なのに恐妻家の男やら、
暴力的で野卑な夫やら・・・・
妙に「人間臭い」ドラマだ。

ルパージュ演出は、舞台機構は大胆な手法を取り入れているが、ドラマの読み込みとしては極めてオーソドックスで、変な読み替えは一切なし。だから、ドラマと音楽が無理なく観客に伝わってきて、「人間ドラマ」に奥深さと広がりが出る。
ワーグナーの音楽の流れに、気持ち良く身を浸すことができた。

指揮は、ボストン響音楽監督退任を発表し、MET日本公演もキャンセルしたレヴァイン。
この春は、「ワルキューレ」のプロダクションが彼の最優先事項だったんだろう。
カーテンコールでは舞台に登場せずピットから拍手にこたえていたが、音楽は大きなうねりと豊麗な響きで流石に立派!Brabo!

幕間の特典映像で、レヴァインのMETデヴュー40周年ドキュメンタリーの一部が紹介されていたが、ドミンゴとレヴァインの「オテロ」の稽古風景が印象的。あのドミンゴを相手に出すレヴァインの声楽上のアドヴァイスの的確さ。そして、それを真剣に受け止め、自分のものにしていくドミンゴの素直さ。「一流」の者同士の心の通った音楽づくりの一端が感じられる。これも一見の価値ありですよ。

そうそう、もうひとつ特典映像。
ワーグナーのライトモチーフのことを、METオケの金管セクションが実演&解説するコーナーもあった。編集をしてあるとはいえ、わかりやすい解説で、ちょっとした音楽鑑賞教室みたい。こうしたことが表現できるもの、市民の理解と支持の上に成り立っているアメリカのオーケストラならではのことだろう。日本の音楽家も大いに見習うべし。

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