■佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2010「キャンディード」
[2010年8月7日(土) Bunkamuraオーチャードホール]
大好きな「キャンディード」の素晴らしいプロダクションに、一年のうちに二度も出会えるとは!
(もう一度は、6月の帝劇、ジョン・ケアード版ね)
バーンスタインの名作を「最後の愛弟子」佐渡裕が指揮。
兵庫芸術文化センターの芸術監督として開館5周年を記念しての事業の東京公演だ。
演出はロバート・カーセン。2006年パリのシャトレ劇場で制作された舞台。
舞台装置は巨大なテレビ。それも60年代の丸みを帯びたブラウン管テレビだ。
序曲の間、「良きアメリカ」の幸せな家庭風景やケネディ大統領の映像が映し出される。
もうこれだけで、胸がジーンとしてきてしまう。効果抜群!
ロバート・カーセンの演出は、キャンディードの遍歴をアメリカに置き換えて描いている。
「この世界は、あらゆる可能性の中で最善に造られている」という、バングロス博士が唱える例の最善説。アメリカという国が国際社会の中で無邪気に存在している間は、幸福感に浸っていられたかもしれないが、やがて矛盾や衝突が生じ、それでも最善なのだ、と言い張り続ける・・・・。戦後のアメリカ合衆国という国(あるいは「アメリカ文化」といってもいいかもしれないが・・・)がたどった道そのもののように演出されている。
ウェストファリアの男爵家はホワイトハウスだし、クネゴンデはマリリン・モンロー。
船の遭難はタイタニック号を連想させるし、キャンディードが絞首刑にあう場面はマッカーシーによる「赤狩り」だ。
マクシミリアンと再会する新大陸は、モルモン教徒の多いことで知られるユタ州のソルトレイクシティ。
油田で有名なテキサスや、ハワイも出てくる。
放浪の果てにたどりついたヴェネツィアは、ラスベガスのカジノだ。
ロバート・カーセンが徹底してアメリカの戦後史と絡めて演出したことで、「キャンディード」の奇想天外なストーリーが現実味を帯びて観る者の心にメッセージを発信してくる。
これこそ、「演出」というものだろう。
フィナーレの「僕らの畑を耕そう Make Our Garden Grow」では、様々な環境破壊の映像の後に、地球の映像が大写し。ヒューマニスト・バーンスタインも納得するであろう素直なメッセージで締めくくられた。
ソリストは、オペラ畑の人もいればミュージカル畑の人もいて、全員ワイヤレスマイクを使って拡声していたが、そんなこと全然気にならず、オーケストラや合唱、舞台美術や劇場空間とのバランスも良く、音楽に込められたメッセージがストレスなく客席に届いていた。
このキャスティングと音響処理は大正解である!
「平和」について何かと考えさせられる機会の多いこの時期、このような「キャンディード」の舞台に接することができBravo!でした。

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